超能力者と共有した時間

誰でも子供の頃、一度はなってみたいと思った超能力者。でも、大人になるにつれてその能力は消えてしまうといういわば都市伝説。この都市伝説は実に強力で、様々な小説でも多用されていますが、元々その存在が希薄な超能力ですから、本当は自分にもあったはず、でも、もう消えてしまったと諦める根拠としてのこの都市伝説は、本物の超能力者にとって、非常に都合の良いものであったのです。
それは、例え自分の超能力を全開しても、人は「そんなこと有り得ないでしょ。」と一顧だにしない根拠にもなっています。

でも、この能力を持っていたらとするあこがれは、何時までも持ち続けている人もいます。私の友人も実はその一人なんです。彼は一時期、ヒーリング能力を開発する講座を夢中になって受講していた時期が有りました。で、実際にリモートヒーリング能力が身について、重病と言われる人たちを次々に直していた時期が有りました。

この時の彼の活躍は本当に目覚ましいものがありました。勿論、全部が全部直せたわけではありません。今回はダメだということは、何度となくありました。それでも、効果のあった場合の治り方は、本当に素晴らしいものでした。
広告会社に勤務しながら無償でヒーリングをおこなって有名になった高塚ヒカル氏のように、表立った活動はしなかったにもかかわらず、全国から依頼が寄せられ、その対応に多大な時間を取られていました。依頼内容を整理する過程で私も手伝いましたが、誠に切羽詰まった内容の依頼が有るかと思えば、我がまま一杯のものまでその内容は実に幅広く、対応しているうちに彼がみるみる消耗していくのを目の当たりにして、これは生半可な気持ちではできないと、心底感じ入った次第です。

その彼は、どんなヒーラーにも必ず付きまとう悩みを持っていました。それは、依存心が異常に亢進してしまった人からの依頼の場合、昼夜を問わずどんな遠くからでも何か異常があれば電話をかけてくることでした。その依頼内容は、ペットの猫の衰弱に関するものでした。人間との心の対話を行いながら治療する医者と同じで、動物とのコンタクトは、また違った能力が必要ですが、彼はその能力はほとんど持っていなかったので依頼を断ったのですが、その依頼の前に、実際に一等船員の尿道結石を医者も驚く短期間ですべて体外排出させることに成功していたのを依頼者は知っていたので、猫の依頼までしてきたのです。

その執拗なまでの電話攻勢は、彼の仕事場にまでおよび、業務に支障が及ぶからと断っても、聞く耳を持たないと言った態でしたので、彼は職場で非常にまずい立場に立たされることになってしまったのです。結局、その猫は良くならないままこの世に別れを告げましたが、この一件を最後に彼はヒーリングの依頼を一切受け受けなくなってしまいました。

本当に、一人のエゴのせいで、世界の役に立つであろう大事な能力を封印してしまったのです。まことに惜しいことだと思います。
その彼に、最近会ってみたら、普通のおじさんになっていました。でも、時折、ヒーリングのようなことを再開してはいると言っていましたので、心の傷は癒えたのだと、少しホッとしました。

でも、あれからの空白の期間、彼がヒーリングを施していたのなら、いったい何人の方が救われていたのかと思うと、いまさらながらではありますが、あの一件の依頼者を、私はいまだに許すことが出来ません。もっとも、彼自身はそんなことも有ったなぁと、遠くを見るように窓の外に目をやる姿が、少し寂しげに見えました。 本当に、小説のエンディングのようなシーンだったことが、心に強く焼き付きました。
(2016年5月12日の日記から)

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