ダニエル・バレンボイムとパリ管弦楽団

生の演奏の素晴らしさを味わったと言えるのは、やはりクラシックの大
編成オーケストラの圧巻のステージを体験した時でしょう。私の場合は、
上野の文化会館で、ダニエル・バレンボイム指揮パリ管弦楽団演奏の
ラベルのボレロを聞いた時です。

ボレロと言えば、スペシャリティーカー華やかりし頃の、ホンダのプレリ
ュードのコマーシャルに使われて以来、多くのコマーシャルでもBGM
として、重用されています。二代目プレリュードが、スローモーションで
駆ける馬群をゆっくりと追い越していくのがモチーフで、一世を風靡しま
した。

バレンボイムと言えば、楽曲の解釈方法や前衛的なスタイルを導入し
ようとしたことで、賛否両論渦巻いた指揮者ではありますが、間違いな
く素晴らしい音を響かせてくれることでも、定評のあった方でも有ります。

そのバレンボイムのボレロは、精緻な二名の小太鼓奏者が主役です。
知っての通り、ボレロは主旋律の繰り返しが印象的な作りであり、繰り
返しに入るごとに、楽器が替わったり増えて行ったりの後、最後のクラ
イマックス部分でいきなりメロディーが激しく崩れ落ちていく手法が、斬
新であった曲です。

導入部分は最弱音で演奏が始まり、最後は全楽器が轟きますが、ここ
で小太鼓に目を転じると、最初は一人で最弱音から始まり、だんだんと
大音量になって行き、それ以上の音量は二人でないと出せないという
正にその瞬間、もう一人の小太鼓が演奏に参加し、最初の小太鼓奏者
はそれに見合った音量に落として、全体としての音量が、その前の繰り
返し時より、若干大きくなるくらいにまで、音量を加減します。

この「加減」こそ、プロの真価を見せる場面で、指揮者はそのタイミングを
きっちりと奏者に意思表示する必要があります。
この切り替えがうまくいった瞬間、声にならない安堵感がコンサートホール
に満ちるのですが、それは曲を良く知っているファンが集まっているからで
あり、その空気感を初めての人には知って貰いたのです。

こういった微妙で精緻な構成の演奏は、実はJAZZでもROCKでもPOPS
でも有るのですが、クラシックとの違いは、「ノリ」の要素が加わってしまう
事です。
この「ノリ」を排除しきったクラッシックの演奏は、研ぎ澄まされた日本刀もか
くやと思われるほどの緊張感を聴衆に強いるのです。

この緊張が生のクラシックコンサートの堪らない魅力の一部だと私は勝手に
解釈しています。
一度もクラシックの生のコンサートを聞いたことが無い人は、是非お聞きくだ
さい。あなたに新しい衝撃が走ることは間違いありません。

"ダニエル・バレンボイムとパリ管弦楽団" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント