高齋正-レーシング小説②

高齋ワールド - レーシング小説群は、いまどきの週刊誌なら、こんな
キャッチコピーをつけるんじゃないかと思います。
作家独自の世界観を持つこと自体、極めて困難が伴う作業だと思いま
すが、執念を感じる取材活動があって初めてかける作品ばかりを、上梓
し続けることの大変さは、私の想像を超えてしまうため、思いつくことも
できません。

彼の小説の凄いところは、ニッサンならニッサンの世界に没入して、完全
にニッサン贔屓になりきってしまっていることです。
そして、安易な問題解決手法は絶対にとらず、作者自身がうんうん呻って
巧妙な背景を構築しつつ、最後にはハッピーエンドに至るゴールデンルー
トを踏襲しているところが、読む者にぐっとくる何かを与えてくれるのです。

例えば、富士重工のレオーネ編では、4WDが世に出るまでのエピソード
に感歎し、パーツメーカーである東洋ベアリングにスポットを当てています。
また、社内テストドライバーの立場と、個人の趣味が一緒になって、これを
原点として会社全体が盛り上がるようなストーリー展開は、フィクションであ
ることを分かっていながら、自然と気持ちが高ぶってくるのを抑えきれませ
ん。

圧倒的な情報量を、いかに整理して分かり易く伝え、読者をひきつけるか
が作者の力量ですが、体が理解した情報より、体当たりで体験した情報の
方が臨場感を伝えやすく、そこに取材の量と緻密さを感じ取ることができる
のです。

その対局にいるのが、高齋氏が作品中で批判している某評論家でしょう。
私もこの人の本を買って読みました。一冊の本に300台以上の車の試乗
記と評論が掲載されています。しかも、毎年改訂されています。
改訂されているということは、毎年すべての車に試乗しているわけです。
でもですよ、300台の車に試乗するということは、毎日一台は最低でも
乗っている勘定になりますから、この方のお年を考えたら、とてもきつい
作業だと思います。

実際、それは不可能だと思います。とすれば、あの本は、筆者の想像で
書かれていることになりませんか。それを有難がって、毎年買う人がいる
こと自体、批判精神を持つ人が減ってきている証座かもしれません。
閑話休題。

高齋氏の精神を理解し影響を受けた人々が創作活動に参加しています。
菅谷充氏もその一人です。「灼熱の走路」という新書上下巻の小説は、高齋
氏の小説とイメージ的にダブル部分が、少なからず見受けられます。
今後の執筆に期待しています。

以下、続く。

"高齋正-レーシング小説②" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント