舟を編む

言葉のセンスに光るものを感じる主人公が、辞書の編纂に情熱を捧げる内容のこの本は、テレビドラマで見た人も多いことでしょうが、ある意味こんなに地道な仕事を小説の題材に取り上げ、またそれをテレビドラマ化しようしたスタッフの着眼点もまた光るものが有ったのでしょう。
言葉は生きていると言われるとおり、あの時流行った言葉が、数年後にはそんな言葉が有ったっけねとなり、さらに数年たてば、その流行った筈の言葉さえ記憶にないという人が大多数を占めるなんてことも珍しくありません。

ハッスルというカタカナ言葉を覚えているでしょうか。これは、阪神タイガースがアメリカのキャンプから持ち帰った言葉で、「がんばれ頑張れ」「凄く頑張った」的な使い方をして、新聞の一般紙にも、「阪神が持ち帰ったハッスル」という記事が載ったほどでしたが、今はごく一部の人しか知らない言葉になってしまいました。

チョベリバ! この言葉も、あっという間に広まったわりには、市民権を得ることなく消えていきました。
超ベリーバッド の略なんですが、30年ほど前の原宿では、この言葉をベースにいくつももっと短命な言葉が生まれては消えていきました。代表的なのが チョベリグッ! 語感から類推できるように、 バッド=悪い の代わりに、グッド=良い を入れたものです。

今でしょ あの某予備校の講師が、予備校のコマーシャルの中で喋った言葉が、爆発的に広まり、漫才のネタに次々に取り上げられて、燎原の野火のような広がり方を見せた言葉です。言葉はすでに下火ゾーンに入っていますが、この先生はいまだに多くのテレビ番組に出演し続けています。一過性のタレントに終わらなかったのは、マスコミを上手に泳げている証拠です。

このような流行り廃りまで、すべて情報として取り上げ、新語として辞書に収めるべきか呻吟難苦するさまをじっくりと映像として描き切っている作品が、「舟を編む」です。秋の夜長にはもってこいの本ですので、紹介させてもらいました。
しかし、作家という人種も凄いと思います。取材に割く労力が、言葉の力となって弾けるのが分かるのですから………。

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