高齋正の小説 ロータリーがインディーに吼える時 その2

ロータリーエンジンは、従来のエンジンとは異なり、エンジンの力その
ものが円運動を行っているので、ピストンエンジンに比べれば、格段に
振動が少ないことは理解できます。しかし、円運動と言っても、中央が
固定した円運動ではなく、繭型のケースの内側に沿うようにピストンに
相当するローターが動いていく構造ですから、そのローラーの頂点と、
内壁は常に密着しながらスムースに移動していくことが求められます。

この密着するシールの性能が上げられなかったために、開発元のNSU
は開発をあきらめてしまいました。アメリカでも、GMやフォードも同様で
した。東洋工業だけが一人執念を燃やして、何度も試作を繰り返しまし
た。

ローターが接する面にひっかき傷ができ、次第にそれが破壊されてしま
うので、技術者たちは悪魔の爪痕と呼んだとか…。
(それは、チャーターマークと呼ばれます)

物語では、そうやって生まれたロータリーエンジンを、海外でも認知させ
るべくインディアナポリスで開催されるインディ500に出場させようとする
までの、エンジンの馬力向上へのチャレンジの日々と、車社会の縮図で
あるレースの人間模様を克明に書き込んでいきます。

自動車のスタイルとか馬力とか居住性には目が行きますが、地道な研
究や縁の下の力持ち的な技術は、話題にしにくいものですが、高齋正は
そこら辺りまで気を配っていますから、「減圧沸騰」などと言う物理法則に
乗っ取った理論とか、フロントエンジン・ミッドシップ・リヤエンジンの生い
立ちや思い込みまでを、アメリカ人の気質に照らして、劇中人物に嵌め込
んで、巧みに説明していきます。

読み進むほどに、インディーの歴史や複雑な予選方式、オーバルコース
故の難しさや駆け引きなど、自然に知識として植え込まれます。
多少生真面目すぎる表現が目立ちますが、それは個人の感性の違いの
範囲内です。

とにかく、ロータリーエンジンの置かれた立場を、端的に理解するうえでも、
必読の書として推薦します。


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