高齋正の小説 ランサーがモンテを目指す時

日本の自動車メーカーでラリーに強いと言えば、三菱とスバルの名が
すぐに上がるほど、この二社のラリー活動は良く知られています。特
に三菱は、一世を風靡したあのパジェロでの名声が、ことさらに輝いて
いますが、その前のラリー用車種と言えば、ランサーが主軸でした。

この頃は、排ガス規制が厳しく言われ始めたころで、例のマスキー法
に対応すべく、独自技術であるMCA、後のMCAJETが開発されました。
ガソリン車の特徴として、一般にガソリンエンジンが発明されてから、
そのシリンダー内に噴射するガソリンと空気の混合比は、燃焼の完全
さを求めた結果、一定の濃さを逸脱することはありませんでしたが、
この濃さでは排出ガス対策的には不利なのです。

そこで、混合気を薄くしたリーンバーンシステムの採用となるのですが、
ガソリンの量が相対的に減りますから、着火が難しくなります。
この問題を解決する一つの方法として有名なのが、ホンダの開発した
CVCC方式です。

これに対する三菱に回答は、吸入・排気弁の外にもう一本の別に設け
た第3のジェットバルブから空気またはごく薄い混合気を噴射する方式
でした。
これにより、シリンダー内に強力な渦が発生し、これによって安定した
着火とうすい混合気とを両立させることが出来たのです。

「ランサーがモンテを目指す時」では、この技術を前面に押し出して、
高性能エンジン化にあたっての回転の落ち込みという問題を提示して、
それをいかに克服するかに力点が置かれた描写が、かなりの量に上り
ます。

筆者である高齋正は、無類のメカ好きで知られ、綿密な取材とも相俟っ
て技術論に陥りそうなところを、技術者の心を描くことによって上手に活
写していきます。
この表現技法は、彼のカーレース小説の根幹を成す部分であり、読む者
を飽きさせない力を持っています。

もう30年以上も前の作品ですが、いま読み返しても、迫力ある描写には
いささかも力の衰えも感じません。
やはり、本物を知るものの力と言えます。

読んで得した気分になれる本として、お勧めします。

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